日本人の子が帰化するための要件
日本人の子が帰化する場合、帰化の要件が緩和されます。
ここで「日本人の子」とは、次の3つの場合が考えられます
①日本人であった(=現在は日本人ではない)者を親とする子
②(現在も)日本人である者を親とする子
③日本人の養子になった子
言うまでもなく、いずれの場合も現在は日本国籍のない子が対象です。
根拠法令は国籍法第6条又は第8条です。
国籍法第6条が該当するのは「日本人であった者の子」であり、国籍法第8条に該当するのは「日本人の子」です。
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国籍法第6条
次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が前条第1項第1号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
1 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有するもの
2 日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
3 引き続き10年以上日本に居所を有する者
国籍法第6条第1号の「日本国民であった者」とは、かつて日本国籍を所持していた方で、その後に外国の国籍を取得したこと等により日本国籍を失った方です。つまり親が日本国民でなくなった場合、子は引き続き3年以上日本に住所又は居所があれば日本国籍が得られる可能性があります。
ここで「居所」とは、住所と同様にその人の生活の中心となる場所を指しますが、住所ほど確定的に生活の本拠となるほどの関係まで至らないものの、多少の期間継続して居住する場所のことをいいます。
国籍法第6条第2号は、子である本人の出生地が日本である場合、又は父親か母親のいずれかが日本で生まれた場合で、引き続き3年以上日本に住所又は居所がある場合です。
国籍法第6条第3号は、住所はなくとも、「居所」として継続して10年以上日本にいる方です。
これらの方は帰化の要件のうち、居住要件が緩和されます。ただし、申請時点で「住所」を有していることが必要なのは当然です。
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続いて、国籍法第8条に該当する方についてご説明いたします。
国籍法第8条に該当する場合は、普通帰化の要件のうち、「居住要件」、「能力要件」、「生計要件」が緩和、免除されます。
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国籍法第8条
次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第5条第1項第1号、第2号及び第4号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
1 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
2 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの
3 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの
4 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの
上記1から4のいずれかに該当する方は、帰化要件のうち、次の3項目については普通帰化の要件が緩和又は免除されます。
・普通帰化では、住所要件は「引き続き5年以上日本に住所を有する」です。
・普通帰化では、能力要件は「20歳以上で本国法によつて行為能力を有する」です。
・普通帰化では、生計要件は「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができる」です。
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普通帰化要件
念のため、普通帰化の7要件を復習しましょう。
1 引き続き5年の日本滞在
連続して5年間以上、日本に「住所」を有していることが必要です。
この「住所」というのは、日本の私法の基本法である民法で、「生活の本拠」のことと定められています。
基本的に、生活の本拠は私的生活の中心地を意味します。
ただ、現代は人の生活環境が複雑化しており、何をもって生活の本拠と判断すべきかは、極めて困難なケースも生じ得るでしょう。そうであるなら、個人の生活の実質関係を考慮して、具体的に決定するほかないといえます。
つまり総合的に、客観的な居住の事実を基礎とし、これにあなた自身の居住の意思を考慮して決定することになっています。
似ている言いかたで「居所」というものがあります。居住の事実を考慮した結果、住所でなく居所であると判断されると、この要件に合致しないことになります。
さらに「引き続き」5年という場合、途中で海外に行って日本を不在していた期間はどのくらいまで認められるのでしょう?
これは、連続90日まで、又は年間で合計100日までがひとつの条件とされています。この期間、日本を離れていた場合、どのような理由であろうと該当しないと認定されます。
さらに、5年のうち3年以上、就労資格のある状態で就労している必要があります。つまり留学や家族滞在等、就労不可でも例外的に週28時間以内の就労が認められていた期間は含みません。
2 18歳以上で本国法で行為能力がある
この「行為能力」という言いかたは、とても専門的です。ここでは、単純に本国でいわゆる成人年齢に達していることをいいます。
日本では満18歳以上で成人と見なされます。本国で何歳が成人とみなされるかは個別に検討するしかありません。
3 素行が善良
これは納税の義務を果たしていること、さらに前科前歴がないことです。
生まれてから現在に至るまで、すべての期間において該当しなければなりません。
納税の義務は課税証明等で判断できます。
前科前歴とは、交通違反も含めた犯罪歴、検挙歴だけでなく、暴力団などの反社会的勢力と関係がなかったことも必要です。
この点については、法務局の審査ですべて明らかにになります。わからないだろう、と決して隠さず、正直に打ち明けてください。もちろん秘密は守ります。
4 生計要件-自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができる
生計要件とは、自力に限らず、又は同居の有無に関係なく、生計を一(いち)にする親族の資産や技能を総合的に判断して、生計を営むことができればよいということです。
「生計を一にする」とは世帯より広い概念です。親から仕送りを受けていても、それは生計を一にしていることになります。
ここで注意すべきは、「永住」と違って年収の定額要件はありません。全体として年収が250万円でも300万円でもかまいません。目安として手取り18万円といわれています。
5 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失う
申請時点で無国籍か、又は日本の国籍を取得することで、それまで有していた国籍を失うことが必要となります。これは国によって異なるため個別に対応する必要があります。
6 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがない
日本の政府を暴力で破壊することを企てたり主張するような者、あるいはそのような団体を結成したり加入しているような方は帰化が許可されません。
7 日本語能力
国籍法には規定がありませんが、当然のこととして日本語能力が要求されます。法務局の審査官との面談時に試験されるものとお考えください。小学校3年生程度、又は日本語能力試験(JLPT)でN3又はN4レベルが必要です。客観的に示すため、余裕がある方はJLPTを受験することをおすすめします。