一般貨物自動車運送事業申請

 1 浜松を中心とする中部運輸局管内の一般貨物自動車運送事業等の申請

 中部運輸局管内の自動車に関する許可全般は、迅速かつ丁寧なサービスを提供してきた私どもにすべてお任せください。

 ここでは代表例として、一般貨物自動車運送事業の申請に絞ってお話します。一般貨物自動車運送事業の申請とは、思い切り簡単に言ってしまうと緑ナンバーの運送屋さんの許可をとることです。「他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のもの」をいいます(貨物自動車運送事業法第2条第1項)。

 つまり、トラックを使用して他人から運送の依頼を受け、荷物を運送し、運賃を受ける場合のことを指します。一般貨物自動車運送事業を経営しようとする方は、国土交通大臣又は地方運輸局長の許可が必要です。このため、事業を始めるに先立ち、許可申請書を提出することになります。

 この許可申請書は、営業所を管轄する運輸支局へ提出します。提出された申請書は、その後国土交通省又は地方運輸局において審査が行われます。

 一般貨物自動車運送事業許可は、非常に要件が厳しく、許可基準を満たすのが難しいといわれています。この厳しい要件をクリアしているか否かを審査する性格上、許可申請の準備を開始してから事業開始まで、とても時間がかかります。許可取得まで順調に手続きが進んだとしても、営業開始は半年では無理とお考えください。営業所や車庫の候補地選定や、役員の法令試験がストレートで合格できないと、営業開始までさらに期間がかかります。

 2 手続きの流れ

 当事務所は事務所のある浜松を中心に、静岡県内から愛知県、岐阜県、三重県までを担当エリアとしています。

 一般的に、運送業開業までの許可申請手続きの流れはおおよそ次のとおりです。

    1. 許可基準に合致できているかの調整と確認
    2. 申請書類作成のための情報収集
    3. 申請書作成
    4. 営業所の所在地を管轄する運輸支局へ申請書を提出
  1. 役員法令試験の受験→合格
  2. 運輸局での書類審査(標準処理期間:3~4か月)
  3. 一般貨物自動車運送事業許可証の受領
  4. 運行管理者・整備管理者の選任届
  5. 運輸開始前の確認報告
  6. 車両の登録
  7. 営業開始(※営業開始は許可取得から1年以内)
  8. 運賃料金設定届出書の提出
  9. 運輸開始届出の提出

言うまでもありませんが、何よりも大切なのは資金計画です。そこは許可とは一見関係ないようですが、許可申請書類の中で資金計画はしっかり見られます。

特に新規創業者は自己資金がしっかり確保されていなければなりません。

 

 3 法令試験

 一般貨物自動車運送事業の許可を取得するためには、運輸局が実施する法令試験に役員の方が合格しなければなりません。

 法令試験は、運輸支局が申請書を受理した後の奇数月に運輸局で行われます。具体的な試験日や受験場所は試験実施日の概ね2週間前までに、許可申請会社の登記簿上の本店住所あて郵便で届きます。

 役員法令試験を受験するのは、一般貨物自動車運送事業に専従する役員の方です。ここでいう役員とは取締役会の一員であって、監査役や執行役員は受験できません。代表取締役でなくてもかまいませんが、複数の役員が同時に受験することはできません。1社で1人だけ受験できます。よくあるご質問として、運行管理者資格を取得していれば免除にならないかと聞かれますが、役員法令試験の免除にはなりません。

 万が一、法令試験の結果が不合格であっても、翌々月の再試験を受験することができます。再試験においても合格点に達しない場合(2回不合格の場合)は、その許可申請は申請者が取下げるか、取下げない場合は運輸局が却下処分します。通常は2回役員法令試験で不合格だと申請を取り下げて、再申請をすれば問題ありません。ただし時間は大きくロスしますから、できるだけ2回の試験で合格しましょう。

 4 一般貨物自動車運送事業の許可基準

 一般貨物自動車運送事業の許可基準については次のとおりです。詳細については当事務所で細かくご説明申し上げます。

 まず、許可取得のためには、貨物自動車運送事業法及び営業所の所在地を管轄する運輸局が定めた基準を満たしている必要があります。許可の基準は項目ごとに分けると次の8つに分けることができます。

  1. 営業所
  2. 事業用自動車
  3. 車庫
  4. 休憩・睡眠施設
  5. 管理体制
  6. 資金計画
  7. 法令遵守
  8. 損害賠償能力

 

 

 許認可の要件は、「人(ヒト)」「物(モノ)」「金(カネ)」の3つの観点に分類されると一般的に言われています。一般貨物自動車運送事業の許可要件は人・物・金に加えて、許可取得後の運行管理体制までもが、許可要件として求められています。

以下8つの許可基準の項目について、当法人の業務取扱エリアである関東運輸局管内に営業所を設置した場合の基準について掘り下げていきたいと思います。

関東運輸局以外の許可基準については、それぞれの運輸局のホームページをご確認頂くか、運輸局へ直接お問い合わせをお願い致します。

 4-1 営業所の要件

自己所有物件・賃貸物件のいずれでも構いませんが、使用権原を有することの裏付けがあることが必要です。

使用権原を有することの裏付け書類としては、自己所有物件の場合は申請法人が所有者として記載されている不動産登記簿謄本、賃貸物件の場合は申請法人が賃借人として記載されている、賃貸借契約書が必要になります。

社長個人名義になっている場合は、申請法人に使用権限があるとは言えませんので、対策を行う必要があります。また、賃貸物件の場合、賃貸借の契約期間が2年に満たない場合は、契約期間満了時に自動更新される旨の記載が契約書に記載されている必要があります。

 4-2 事業用自動車の要件

営業所ごとに5台以上の貨物自動車が必要です。一般貨物自動車運送事業に使用できる貨物自動車は緑色のナンバーがついた車両に限定されるます。黒色ナンバーの軽貨物自動車は最低車両数の5台の中に含めることはできません。

また、使用する貨物自動車がトラクターとトレーラーの場合は、トラクター(牽引車)+トレーラー(非牽引車)をセットで1台とカウントします。それぞれを1台、計2台とはカウントしません。

さらに、事業に使用する自動車は使用権限を有することが必要です。

車両の所有権限の有無は、車検証上の所有者又は使用者の欄に一般貨物自動車運送事業者が記載されることです。自己所有に限らず、リース会社より借り受けている車両であっても、事業に使用することができます。車両は許可申請時に現車がなくても、車両が特定できること、売買契約、譲渡契約、リース契約が締結されている状態であれば使用権限があると判断されます。

 4-3 車庫の要件

  1. 原則として営業所に併設することが求められます。併設できない場合は営業所と車庫の直線距離が直線で10㎞以内であれば使用できます。ただし、営業所と車庫が離れていると運転者や運行管理者の往来だけで負担になります。運行管理でも非常に不便です。可能ならば営業所の近くに車庫を設置した方が、許可後の事業運営の負担を減らすことができるます。
  2. 車庫の前面道路の幅員が、車両制限令に適合している必要があります。幅員の確認方法は幅員証明書に記載されている数値によって判断します。このため幅員証明書の取得が必要です(国道の場合は不要)。前面道路の幅員は6.5m以上あれば問題ありませんが、6.5m未満の場合は通行可能な車幅の制限を受けることがあります。場所によっては2.5m幅の車両を駐車する車庫として使用できない場合があり、細かく調査を行う必要があります。車庫の候補物件が見つかったら、道路管理者(市区町村や県)から幅員証明書を取得します。
  3. 一般貨物自動車運送事業に使用する車両全てが駐車できる面積が必要です。車両を駐車した状態でも日常点検が実施できるスペースが必要なため、車両をぎりぎりに詰めて収容することは認められません。
  4. 車両と車庫の境界及び車両相互間に50センチメートル以上の間隔を確保する必要があります。
  5. 車庫も他の輸送施設と同様に、自己所有又は賃貸借契約などの使用権限を有することが求められます。
  6. 車庫は市街化調整区域内でも設置することは可能ですが、農地をそのまま車庫に使用することはできずません。農地を車庫に使用するためには農地転用の手続きを行う必要があります。ただし農地転用の手続きは一般的に簡単とはいいがたく、時間と手間がかかります。農地を車庫として使用したい場合は、できるだけ早く農業委員会に相談しましょう。
  7. 車庫は屋根がなくても問題ありません。屋根のある車庫や車庫敷地内に屋根のある整備場を設ける場合は、建物が都市計画法や建築基準法違反にならないよう注意が必要です。
  8. 車庫の適格性についての確認は、車庫の写真を撮影してそれを提出する方法によって行います。

 4-4 休憩・睡眠施設の要件

 一般貨物自動車運送事業の休憩睡眠施設は単独で設置することはできません。営業所に併設する運送会社様が多いですが、併設できない場合は車庫に併設させる必要があります。営業所に併設させる場合は、営業所で使用する部分と運転者の休憩睡眠施設で使用する部分は別々であることが求められます。休憩睡眠施設の部分はパーテーションなどで区画すべきです。休憩睡眠施設内に運転者が使用する設備備品があることの確認方法は、写真を撮影して提出します。

 面積は、運転者に睡眠を与える必要がある場合は2.5㎡/1人当たり以上の広さを確保しなければなりませんが、運転者が休憩睡眠施設では睡眠をとらない場合は、いつでも休憩できるようにテーブルや椅子、ソファーなどを設置すれば十分です。

 使用権原を有すること、農地法、都市計画法、建築基準法等関係法令に抵触しない施設であるという基準は、営業所と同じです。

 4-5 管理体制の要件

 一般貨物自動車運送事業を適正に運営できる管理体制が整えられていることが必要です。適正に運営できる管理体制で重要になるのは次の項目です。

  • 運転者を常に確保できる体制であること。日々雇い入れられる者、2月以内の期間を定めて使用される者又は試みの使用期間中の者(14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)は一般貨物自動車運送事業の運転者に選任することはできません。
  • 運行管理者と整備管理者。選任が義務づけられている員数の常勤の運行管理者・整備管理者を確保できることが必要です。運行管理補助者を選任せずに運行管理者が1人の場合は、運行管理者は運転者と兼務はできません。なお、整備管理者は運転者との兼務は可能です。また、運行管理者と整備管理者も兼務可能です。従って、最低車両数の5台で許可を取得するためには、運転者ではない運行管理者1人と運転者5人の計6人が最低必要員数となります。
  • 運転者の労働条件。運転者の拘束時間・運転時間といった労働条件が、改善基準告示に合致していることが求められます。
  • 運行管理の担当役員などの運行管理に関する指揮命令系統が明確になっていること。車庫が営業所に併設されていない場合は、車庫と営業所が携帯電話などを使って常時密接に連絡を取れる態勢が確保されており、点呼が確実に実施できる体制が確立されていることが求められます。
  • 事故防止や危険品。事故防止についての教育・指導体制や、万が一の事故発生時の報告体制が整備されており、危険品の運送を行う事業者は、消防法等関係法令に定める取扱資格者が確保されていることが求められます。

 4-6 資金計画の要件

 事業の開始に要する資金の見積が適切なものであり、その所要資金の合計と同額若しくはそれ以上の自己資金が必要になります。

 次の①車両費+②建物費+③土地費+④保険料+⑤各種税+⑥運転資金+⑦登録免許税=所要資金です。ぜひ細かく計算してください。

  1. 車両費:一括購入の場合..は取得価格全額、分割購入の場合は頭金プラス割賦金1年分、リース契約の場合は1年分の賃借料。
  2. 建物費:一括購入の場合は取得価格全額、分割購入の場合は頭金プラス割賦金1年分、賃貸の場合は敷金等の初期費用プラス1年分の賃借料。
  3. 土地費:一括購入の場合は取得価格全額、分割購入の場合は頭金プラス割賦金1年分、賃貸の場合は敷金等の初期費用プラス1年分の賃借料。
  4. 保険料:自賠責保険料、任意保険料の1年分。危険物の運送を行う場合は、危険物に対応する賠償保険料1年分。
  5. 各種税:租税公課の1年分。
  6. 運転資金:人件費、燃料油脂費、修繕費等の6か月分。
  7. 登録免許税:許可取得後に中部運輸局へ納付する12万円。

 自己資金の注意点として、自己資金は申請日以降許可日までの間、常時確保されていることが必要です。自己資金は預貯金とお考えください。立証方法は、申請日時点と審査中適宜の時点での金融機関が発行した残高証明書(原本)又は預金通帳(写し)で行います。もし、自己資金が預貯金額だけでは足りない場合、中部運輸局が認めた場合に限り、預貯金以外の売掛金等(流動資産)も含めることもできます。この場合、流動資産の額の立証方法は、申請日時点及び審査中適宜の時点の「見込み貸借対照表」に記載された金額となります。自己資金に流動資産を含めたい場合は、運輸局との事前調整を細かく実施しなくてはなりません。また自己資金額=資本金額ではありません。

 事業を開始する場合に共通する最初の重要課題として、資金計画と自己資金はしっかり検討しましょう。そもそもここをクリアしないと金融機関は融資してくれません。ただし自己資金をいくら準備すれば許可を取得できるか、という疑問はもっともですが、事業者様の個々のご事情によってまったく異なります。どの場所に、どのくらいの規模感の営業所・車庫を設置するか、事業に使用する車両の台数、最大積載トン数、装備、その車両は新車で購入か中古車か、車両はすでに所有しているのかリース車両か、そういった事業計画の内容により事業開始に必要な自己資金額は異なってきます。営業所・車庫に使用する土地・建物を所有していれば許可申請の自己資金は少なくできますが、賃貸物件の場合は1年分の賃料を自己資金として確保しなければなりませんので、それだけでもそれなりの金額になります。ごくざっくり申し上げると、中部地方の都市部で運送会社を開業した場合、営業所・休憩睡眠施設・車庫の賃借料や車両5台分のリース料などを合算した所要資金は、2,500万円近くになるものと思われます。人件費が固定経費としては最大の項目で、1,500万円近くの額を計上します。自己資金1,000万円前後で新規許可を取得するのは、残念ながら限りなく無理に近いのが現実です。

 4-7 法令遵守の要件

 申請者又はその法人の役員が、貨物自動車運送事業の遂行に法令知識を有しており、かつ、その法令を遵守することが求められます。法令知識の確認のため、役員法令試験を受験して合格する必要があります。また、社会保険加入義務がある事業者は社会保険に加入することも求められます。

 常勤役員の欠格事由として、申請者又は申請者が法人である場合はその法人の業務を執行する役員が欠格事由に該当していないことが求められます。欠格事由は貨物自動車運送事業法や公示に規定されています。貨物自動車運送事業法では、次の欠格事由が規定されています。

  1. 1年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、その執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない方
  2. 一般貨物自動車運送事業許可・特定貨物自動車運送事業許可取消しの行政処分を受けその取消しの日から5年を経過していない方
  3. 処分逃れのため自主廃業を行ってから5年を経過していない方
  4. 親会社・子会社・グループ会社等が一般貨物自動車運送事業許可・特定貨物自動車運送事業許可取消しの行政処分を受けその取消しの日から5年を経過しない方

 その他、欠格事由は厳格化しています。詳細は法令や公示を確認する必要があります。

 巡回指導として、許可取得して運輸開始後から1か月~3か月が経過すると、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が営業所を訪問して法令遵守体制の確認を行う『巡回指導』が行われます。この巡回指導の評価が悪く、改善が見込まれない場合には、運輸支局の監査が実施されます。最初の巡回指導が終わるまでは、許可取得手続きだと思われた方がよいでしょう。最初の巡回指導で高評価を得られると、何もなければ次の巡回指導は2~3年後に実施されます。

 4-8 損害賠償能力の要件

 一般貨物自動車運送事業を営む上で、損害賠償能力があることは許可の重要な要件です。多くの運送事業者は対人・対物ともに無制限の任意保険に加入しています。また、危険物の輸送に使用する事業用自動車は、上記の任意保険に加えて危険物輸送に対応する適切な保険に加入する計画があることも求められます。